B03班:集団の拡散と文明形成に伴う遺伝的多様性と身体的変化の解明
班構成
- 研究代表者
- 瀬口 典子(九州大学大学院比較社会文化研究院・准教授)
- 研究分担者
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石井 敬子(名古屋大学情報学研究科・准教授)
五十嵐 由里子(日本大学松戸歯学部・准教授)
勝村 啓史(北里大学大学院医療系研究科・准教授)
松永 昌宏(愛知医科大学医学部・講師)
水野 文月(東邦大学医学部・助教)
山本 太郎(長崎大学熱帯医学研究所・教授)
- 研究協力者
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植田 信太郎(東京大学・名誉教授)
太田 博樹(東京大学大学院理学系研究科・教授)
米元史織(九州大学総合研究博物館・助教)
研究目的
本研究は集団の拡散・移動と文明形成に伴う身体形質の適応過程と遺伝的多様性の変化を解明することを目的とする。考古学班との密接な連携と共同研究に基づき、形質人類学的データ、遺伝子、AncientDNA を用い、日本列島を含むアジア地域から、アメリカ大陸、オセアニアへの人々の拡散のタイミングや経路、拡散後も常に流動的である集団内と集団間での人々の遺伝子の流動、集団内での遺伝的浮動といった集団の歴史(Human population structure and history)を解明する。そして、各地域での身体形質、人口構造と人口動態、寄生虫・感染症を含む健康状態を推定し、また、人類に新天地への移動を可能にした認知能力と拡散に関連する適応候補遺伝子を明らかにする。そのために、【A】形質人類学と遺伝子による統合研究、【B】心理学と遺伝学の融合研究という2方向からのアプローチを採用する。
【A】においては、(1)人骨の高精度の3 次元表面形態データ、および次世代シーケンサによる人類のDNA 解析結果を用いてユーラシアからアメリカ大陸、オセアニアへの人類の拡散と集団の歴史を復元する。(2)人類は拡散の過程で異なる気候地域で身体を適応させてきた可能性があることから、拡散した各地域での身体形質およびその多様性を形質人類学的に解明する。(3)気候変動は、食料資源を変化させ、居住域の変化に伴う人口サイズの変化をひき起こし、その結果感染症など人類の健康状態に極めて大きな影響を与えてきた。そこで、骨形態から健康指標および人口構造・人口動態を推定し、次世代シーケンサ解析をもちいて寄生虫感染症とウイルス/細菌感染症を解析する。以上の結果から(a)農耕の開始、国家形成や都市化などの文明形成に伴う食生活や栄養状態の変化、感染症の流行、人口構造・人口動態の変動、身体形質の変化を復元し、(b)コロンブス来航以来の古代都市文明の衰退とその要因の解明を目指す。【B】においては、モデル動物を用いて新奇性探索遺伝子を抽出し、それを基にして人類を拡散と移動に導いた人類の探索行動や認知傾向に関係する遺伝子多型を明らかにし、人類集団の文化形成に関わった遺伝子を分析する。