C01班:三次元データベースと数理解析・モデル構築による分野統合的研究の促進
班構成
- 研究代表者
- 中尾 央(南山大学人文学部人類文化学科/人類学研究所・准教授)
- 事務担当者
- 竹内 愛(南山大学人類学研究所・研究員)
研究目的
本研究は統合的人類史学のための、分野を超えたデータの共有と分析を可能にするデータベースの構築、そしてそれに基づく各種データの時空間的関係、共変動、因果関係等について数理的・統計的に考察し、最終的には物質・身体・心の相互作用によって生物としての個人の能力を超えた知のシステムとしての文明創出メカニズムを数理・理論モデル化することを目指す。本領域が対象とする出ユーラシア地域のモニュメント、遺物、民族誌データ、認知的データ、自然人類学的データ等を空間的・時間的位置を基準とするフレームワークに位置づけて相互参照・検索可能な形とする。SfM-MVS(Structure from MotionおよびMulti-view Stereo)、レーザー光を用いたスキャナーやLiDARなど三次元計測機器により取得したデータとリンクすることで、対象物の形に対する幾何学的形態測定手法を用いた定量的な解析や比較を可能とする。この作業を通じ、近年盛んに行われている巨視的比較文明論にありがちな欠点である偏ったデータに基づく定性的・直感的議論を展開するという問題を超え、確固たる基盤に基づく新たな人類史学が可能となる。
ヒトとモノの知覚的・行動的関係を分析するため、図面や写真等の従来型の2 次元データだけでなく、現物や現地での調査から3 次元データを多数取得することで、濃密な情報による従来にない比較分析を可能にする。すなわち、上記の土器・土偶・身体・建造物などの多様な対象に施される文様構造の比較分析も、そうした濃密なデータに基づいて実施する。比較分析の方法論的検討をB02認知科学班との緊密な議論と共同研究を通して推進し、B02 班で実施する認知科学的実験計画の構築にも積極的に関わっていく。
各班からのデータを取りまとめる本研究は、総括班との密接な連携の下、異分野統合のハブとしての役割を果たし、領域全体の一貫性・統合性を確実なものとする。これにより、考古学・人類学の研究手法の刷新や、従来の定性的比較研究では見えてこなかった傾向や課題の発見も期待される。